「だんだん街の徳馬と嫁」を読みました。
戦後すぐの鉄工の街八幡市が舞台の夫婦の結婚から物語が始まります。
女の方は再婚でした。しかも初婚の相手は再婚相手徳馬の兄義一。
なぜふたりは結婚することになったのか?
万火子はどういう心境なのでしょうか上巻1話~2話まで、まとめ・ネタバレ紹介します!
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目次
「だんだん街の徳馬と嫁」のあらすじ・ネタバレ
本作は上・下巻に分かれており、1巻あたりの量も多いので、上巻を2つに分けてご紹介します!
今回は1話・2話になりますので、ネタバレにご注意ください。
【第1話】当たり前の夫婦
終戦後、間もない鉄の街――福岡県八幡市。
若い夫婦が祝言をあげていました。花嫁の角隠しは煤で汚れていますが、花嫁はそれを気にする様子もなく粛々と盃を傾け式は進みます。
婿の名前は黒住徳馬。徳馬は今日、兄・儀一の嫁をめとりました。
みんなでお祝いの食事をしながら町一番の別嬪の万火子と結婚をした果報者とみんなにもてはやされる徳馬。
そんな中一人のおじさんが声をかけてきました。強か酒に酔った様子で徳馬に絡みます。
「お前の兄は…腑抜けのお前の代わりに戦争にいったんぞ。
義一の代わりに万火子ちゃんをしっかり守っちゃりい」そう言われ、徳馬は素直に頷きました。
まだ男性の兄の話が続きそうな気配を悟ったのか、万火子が現れしとやかに祝言のお礼をしその場の雰囲気を変えてしまいました。
男性はそれ以上は何も言わず仲良くとだけ言い残して席に戻っていきました。
祝言が一人帰路についた徳馬は兄のことを考えていました。
出兵した兄が戻って来た時には骨になっていました。
兄が死んでしまったことの実感がいまだ徳馬にはありませんでした。
遺骨を前にへたり込む徳馬の隣で義一の嫁だった万火子は小さく「わかりました」と訛りのない言葉で返事をするだけでした。
その姿をみて、もう二度と兄に向けていたような笑顔は見ることが無いのかと的外れなことを考えていた徳馬でした。
万火子は兄への想いは整理できたのだろうか…。
家に帰りつくと、そこでは万火子が三つ指をついて徳馬の帰りを迎えてくれました。
あまりのことに緊張してしまう徳馬。
事情は特殊でも少しでも早く「当たり前の夫婦」になりたいと徳馬は考えます。
布団を敷かれた部屋に入ると布団が一枚だけなのをみてまたしても驚く徳馬。
緊張の中、徳馬は口を開きます。
万火子の意思を無視して結婚話が進んでしまったこと、気づいたら止めようとしようにも止められないところまできていたことなど今まで言えなかったことを詫びる徳馬に、むしろ色々気を使わせてしまったけれど、義一のことはもう忘れましたと謝る万火子。
その言葉を聞いて、徳馬は万火子に言います。「こっから先、「ごめんなさい」はなしな!」もっと万火子には楽にしてほしい、そんな気持ちから出た言葉でした。
徳馬は布団をもう一組押し入れから取り出すと、二組並べました。
そうして、ゆっくりでいいし、兄のことも忘れなくていいと万火子に言います。
そうして初夜は何事もないまま二人眠りについていくのでした。
徳馬は夢を見ました。
押し入れに隠れて戦争に行きたくないと叫ぶ徳馬。
しかし当時戦争に行かない選択肢はありません。
困り果てる父親にその様子を見ていた義一が言いました「俺が戦争に行く」と。
虫も殺せない徳馬が前線でまともに働けるわけがない。
そのかわり製鉄工場でなら徳馬はまとも以上の働きができる。
そういって徳馬の代わりに万火子と結婚したばかりの義一が戦争に行くことになったのでした。
徳馬は仕事場である製鉄所にいました。製鉄所でも花形の仕事と言えば溶鉱炉。
過酷な場所でやめていくやつも多いけれどいっちゃんはげしくていっちゃん大事なところ。
そこで徳馬は働いていました。
休憩中仲間に万火子との関係を聞かれますが、よくわからないと答える徳馬に何かプレゼントをするようにとアドバイスする仲間たち。
家に帰って疲れてのびている徳馬に万火子が心配そうに声をかけます。
「今は夏痩せの時期やけ…」専門的な話をしそうになって言葉を止める徳馬に万火子がわからないけれど聞きたいと言います。
照れくさそうに話し始める徳馬。
夏痩せとは夏場は高炉の具合が悪くなることで作業も滞って場合によっちゃ死人が出る。
それはここで死んだ人たちの祟りだと言われていた。
しかし義一は湿気のせいだと論理的に考えて説明をしていた。
自分たちがそういうもんだと思っていたことをきちんと頭を使って考えるすごい人だった…。
そういったところで義一の話を持ち出してしまったことに思い至る徳馬。慌てて話を変えるけれど、万火子はどう思っているのか徳馬にはわかりませんでした。
翌朝、いつものように万火子の作った弁当を持って家を出る徳馬。
案外自分たちももう「当たり前の夫婦」になっているのかもしれんな…布団は二組やけれど。徳馬はそう思い始めました。
ある日、万火子がいつものように洗濯物を洗っていると、近くの家の人が駆け込んできました。
「あんたの旦那が働きよる第一高炉で事故っち!」
慌てて鉄工所へ向かう万火子徳馬の同僚に教えられ徳馬のいるところへいくと、そこには横たわった姿の徳馬が。
動かない徳馬を見て膝から崩れ落ちる万火子。
その様子に同僚が慌てて声をかけてくれます「大丈夫!いきとおっちゃ!」徳馬は自己が発生した時、真っ先に救助に当たっていた反動でぶっ倒れただけで生きていたのです。
そんな徳馬の手が動きました。そうして万火子に向かって握っていた手を開いて見せます。
その掌には指輪が載っていました。
そう、徳馬は空いた時間を見つけて万火子への指輪をこっそり作っていたのでした。
万火子はあっけにとられた後、涙を流しながら徳馬に言います。
「あほやねえんかちゃ!!」
今まで訛りの無い言葉でしゃべっていた万火子の初めての訛り。
徳馬は嬉しそうに謝りました。
家に帰ってからも万火子のご機嫌は斜めです。謝り続ける徳馬に万火子が言います。
「危ない職場やもん、夫がいつも心配で…なんかあったらいてもたってもいられんくなって…それはここの女みんなが持っとおすごく当たり前な…」
当たり前の関係。
徳馬が考えていたことと同じことを考えていたことが徳馬はとてもうれしくて、万火子の手をぎゅっと握りました。
こんな当たり前の積み重ねが俺らを本当の夫婦にしてくれるはずや、だんだんとだんだんと…。
二人は眠りにつきました。
【第2話】見せたいもの
徳馬は万火子をお祭りに誘いました。
戸畑祇園というお祭りで、戦争の間やっていなかった祭りが今年から再開になったのです。
二人はいまだ二組の布団で寝ていました。
祝言をしたものの、まだどこかで兄ちゃんの嫁と弟という関係なんだろうと思うことがある徳馬なのでした。
祭りは人手がすごく混んでいました。娯楽らしい娯楽の無い毎日でやはりみんな楽しそうにしています。
会社の同僚に出会う度に楽しそうに話す徳馬に万火子は慕われてるんですね、というと徳馬は「そんなことない。それに人望なら兄ちゃんの方が…」そこで万火子の顔色が変わった様子を見て徳馬が焦ります。
しかし、徳馬の心配もよそに万火子は笑いながら「義一さんは人を引き寄せるような人でしたからね」と答えるのを見て、もしかしたら万火子の中でも兄の存在が遠いものになっているのかも、と思い始める徳馬。
日も暮れ始めた頃、二人の元にまた会社の同僚がやってきました。
もう二人で打ち解けられたか?夫婦生活もうまくいくといいけどな~~と茶化す同僚に、徳馬は「簡単に言うな、俺がどんだけ我慢しとんのか…!!」とそこまで言って時が止まりました。
しかし、万火子は顔色を変えることなく徳馬に行こうと話しかけるのでした。
そうして、言われるがまま同僚を後にした二人。
もう帰ろうという万火子に思うことがあるのなら我慢せず言って欲しいという徳馬ですが、口を開かない万火子。
しかし徳馬も引きません。とに角見せたいものがあるからもう少しいようと引き止めます。
不承不承受け入れる万火子。兄と違ってうまくできない自分にやきもきする徳馬。
夜になり、無数の提灯に火がともります。
その姿をみて万火子は綺麗だと見惚れました。徳馬は万火子に向かって言います。
兄が見せたことのないものを見せたかった。
子供っぽいけど、もっと自分は万火子のために努力とか我慢とかしたい、掛値のない言葉に、万火子は素直に頷きました。
その夜、徳馬は初めて万火子の布団に忍び込みました。
キスも万火子も嫌な顔せずそれを受け入れます。
そして万火子が徳馬の首に手を回しながら口に出した言葉は――
「義一さん」
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だんだん街の徳馬と嫁【第1話~第2話】の感想
昔から憧れていた死んだ兄・義一の嫁を娶ったところまでは良かったですが、義一が偉大だったためになかなか義一の呪縛からは逃れることが出来そうにありません。
万火子も何を思っているのかあまり口に出しませんが、やはり咄嗟に義一の名前が口をついて出てしまうということは、相当兄のことを好きだったんですね…。
もし自分が万火子の立場だったら、本来だったら行かなくていい戦争に徳馬の代わりに行って義一が死んでしまったのであれば徳馬のせいで…と思ってしまうかもしれないです。
そう考えると万火子は徳馬のことを受け入れているのはすごいなと思ってしまいます。
布団の中で義一の名前を呼んでしまった万火子、この先どうなるのか続きが気になります…!
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