「君たちはどう生きるか」とは、1937年に発売された吉野源三郎さんの名作です。
一貫して「人間らしく生きるにはどうしたらいいのか」というテーマが描かれています。
世の中に悩む人にとって、背中を押してくれる作品です。
2017年には羽賀翔一さんにより漫画化され、『漫画 君たちはどう生きるか』のタイトルでマガジンハウスから出版された。また、同年には宮崎駿さんが制作中のアニメ映画のタイトルを、本作から取って『君たちはどう生きるか』にすることを発表しました。
今回はそんな話題作「君たちはどう生きるか」のあらすじ・ネタバレ・要約についてまとめました。
以下ネタバレを含みますので先に試し読みもオススメです。
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目次
あらすじ
2017年にマンガ版が発売されましたが、コペル君が日々の生活の中で直面する出来事を追っていくうちに、彼らの勇気と苦悩、そして「人間らしく生きるにはどうしたらいいのか」を一緒に考えていくことになります。
大切な友達を裏切ってしまったことを後悔しに苦しむ中学生のコペル君こと本田潤一。
学校に行けなくなってしまったある日、叔父さんから渡されたのが一冊のノートでした。そこには、コペル君が叔父さんに話したコペル君が考えたこと・話したことについておじさんからのメッセージが書かれていました。
君たちはどういきるか「へんな経験」
潤一の家の近所に叔父さんが引っ越してきた日、二人で銀座のデパートの屋上までやってきました。
潤一は、屋上から見える人が小さいのを見て、「本当に人間って分子なのかも」と叔父さんにはなします。叔父さんはその日を境に、潤一のことを「コペル君」と呼ぶようになります。
その人間分子体験は、コペル君にとっては自分がこの世界に溶けてしまいそうな気がしてほんとはちょっぴり怖いものでした。
叔父さんのノート「ものの見方について」
「本当に人間って分子なのかも」ということはいかに大発見かよく覚えていてほしい。今回、君が考えたことは深い意味を持っている。
コペルニクスが地動説を発見する前は、天動説という天が自分を中心として回っているという考え方だった。コペルニクスが地動説を発表したとき、かなりの迫害にあい、地動説が世間に広まるまで時間がかかってしまった。
天動説は、人間が自分を中心としてものを見たり、考えたりしたがる性質をもっていることの現れで、子供の時はどうしても天動説で世界をみている。大人になっても、自分中心に物事を見てしまうくらい根深く・頑固に残るものなのだ。
勇ましき友
コペルニクスのように、どれだけ周りの人に間違っているといわれても、自分の考えを信じ抜けるひとになってみたいと思うようになったコペル君。
クラスメイトの浦川君がいじめっ子の山口から、「あぶらげ」と呼ばれていることを知ります。山口が視界に入るたびにびくついていたことを暮らす全員知りながらも、やり返されることが怖くて誰も何もできませんでした。
人間は、大きな塊になって動いているせいで、かえって抜け出せなくなっているのではないかと考えます。おじさんにいじめのことを相談しても、「自分で考えるんだ」と言われるばかりです。
本物の勇気
ある日、コペル君の友達であるガッチンが先生の不在中に山口を「浦川へのいじめはやめろ」と取っ組み合いをし始めます。クラス中がガッチンの加勢をしますが、浦川君だけがガッチンに「やめてくれ」ととめるのでした。
叔父さんに事の顛末をはなし、周りの流れに勇気をもって逆らった浦川君は立派だと話すと、中学生で自分で考えたことを自分の言葉で表現できるのはなかなかできる事じゃないとほめられました。
真実の経験について
私やコペル君のお母さん・亡きお父さんも君にはよい人間になってほしいと思っている。勉強のことは教えることはできるけど、人間として生きることや人間が集まって世の中を作っていくことにどれだけの価値があるのかは教えることができないし、人間らしく生きて感じなければ分からない。
学校や世間が立派なことだと言っているからといって、その通りに生きても人間らしく生きることにはならない。人間らしく生きる価値については、いつでも自分が本当に感じたことから出発して正直に考えることが大事だと思う。
人間の立派さがどこにあるのか、自分の魂で感じて立派な人間になりたいと心の底から願うことだ。
ニュートンの林檎と粉ミルク
叔父さんと水谷君、ガッチンとで野球をしていた日、コペル君はふとニュートンの万有引力について思いだし、ニュートンはなぜ林檎を見ただけで大発見ができたのかギモンに思います。
叔父さんは、3人の前でニュートンが想像の中で林檎の木を伸ばして空から月が落ちてこないことに気がついたのだと解説し、ひとつのわかりきったことを追いかけていくと、ものごとの大事な「根っこ」にぶつかることがあると教えてくれました。
誤ってミルク缶を落としてしまったコペル君は、ミルク缶が家にたどり着くまでにいろんな人が関わっていること、そしてそのほとんどの人を知らないことを発見し「人間分子の関係・網目の法則」として叔父さんに報告の手紙を出したのでした。
人間の結びつきについて-なお、本当の発見はどこにあるか-
コペル君が発見した「人間分子の関係・網目の法則」は、経済学・社会学で「生産関係」という言葉がある。
昔から、人間は分業しながら生きてきた。顔がわかる身近な人から始まり、交換や縁組みなどで共同生活範囲が広がっていき、国を作るようになった。もっと人間が複雑に入り組み、世界がひとつの網のようになった。
君が生きていく上に必要なものを作るために、たくさんの人が働いていた。でも、全くの見ず知らずの人ばかりなのは、世の中が本当に人間らしいつながりになっていないからだ。
本当に人間らしい関係とはどんなものだろう。人間が人間同士、お互いに好意を尽くし、それを喜びとしているほど美しいことはほかにありはしない。
本当の発見について
本当に人類の役に立ち、万人から尊敬されるだけの発見とはなにか。それは君がはじめて知ったということではなく、君がそれをはじめて知ったことが同時に人類がはじめて知ったということでなくてはいけない。
人間が人生で経験することには限りがあるが、学問は万人の経験を各方面からまとめたものなのである。人間はできるだけ学問を修めて今までの経験から教わらなくてはならない。
人間が今まで進歩してきて、まだ解くことができない問題のために骨を折ることができなければうそだ。その上の発見こそ、人類の発見という意味を持つことができる。また、そういう発見だけが偉大な発見といわれることもできる。
貧しき友
学校を休んで家を手伝っている浦川君に勉強を教えに行くようになったコペル君。ノートを買うことができないからとギッチリとノートを書く浦川君に、いつになったら学校にいられるのか訊ねます。山形にお金を工面しているお父さんが帰ってくれば学校に行けるそうです。
聞いたコペル君は、クラスでは目立たなくてバカにされるけど、本当はすごい奴なんだ!と走りながら家に帰りました。
おじさんに、もしも自分が浦川君の立場だったら投げ出しているかもしれない。浦川君は一歩一歩進んでいると感動を伝えると、「君はある大切なものを日々生み出している。それはなんだとおもう?」と問いかけられるのでした。
人間であるからには−貧乏ということについて−
君が浦川君のためにいろいろ親切にしてあげるのはいいことだ。尊敬せずにはいられない美しい心根や優しい気持ちがあることをしたのはいい経験だ。
貧しい暮らしをしている人はみな、貧乏なことを引け目に感じているもので傷つきやすい。だから、そういう人が恥ずかしい目に会わないように、見下さないようにその素直さを忘れてはいけない。
人間の値打ちは、金持ちでも貧乏でも関係ない。尊敬するべき人間は貧乏でも偉いのだ。いつでも自分の人間の値打ちに目を付けて生きて行かなくてはいけない。
世の中を支えているのは
貧乏な人を見下してはいけないのは、世の中の大多数が貧乏だからだ。多くの人が人間らしい暮らしをできないのは大きな問題となっている。
貧しい暮らしをしている浦川君だって中学校に行っているが、若い衆は小学校までで勉強をやめないといけなかった。
若い衆は自分の労力だけが資本だが、体を壊せば稼ぐことができない。
体を壊しては困る人たちが一番体を壊しやすい環境にいる。学問も芸術も貧しい人たちにとっては夢でしかない。君がなんの縛りもなく勉強に打ち込むことができるのは、本当にありがたいことなんだ。
貧しい環境に育ち、働いて生きてきた人々こそ世の中を担ぐ立派な人たち。彼らが人が生きていくために必要なものを生産してくれなければ、消費できない。生産の働きこそ、人間を人間らしくしてくれる。
浦川君は、生産する側に立っている。りっぱに家業をこなし、いやな顔せずに働いていることに対して尊敬を持つことが重要だ。
ナポレオンと4人の少年
コペル君の教室のまわりを、上級生がうろつくようになりました。ガッチンは、ナポレオンの伝記を読んで研究したいので誰か持っていないかとコペル君に訊ねます。
叔父さんの家にならあるかもしれないと叔父さんの家に押し掛けると、本の代わりにナポレオンが10年で貧乏将校から皇帝に成り上がったこと、国内外の外交を一手に引き受けたこと。大戦争をいくつも指揮したことを話してくれました。
ナポレオンの話に鼓舞されたガッチンは、いじめっこの山口に目を付けられて、山口の兄と友人たちに狙われていると告白しました。それを聞いた浦川君・水谷君・コペル君は、ガッチンの危機には壁になると約束し、叔父さんの前で指切りするのでした。
それを見ていた叔父さんも、なくなったコペル君の父との約束を思いお越し、コペル君の世代に立派な人間になるために伝えることをまとめた本を自分で書く覚悟をします。
偉大な人間とは−ナポレオンの一生について−
なぜナポレオンの一生は僕らを感動させるのか。まずはその活動量だ。
10年で貧乏将校から皇帝に成り上がりフランスを納めたが、ロシアの大遠征で60万人いた兵士を1万人未満まで死亡させてしまい、次々に他の国に攻撃され島流しされて5年後に死んでいった。将校から亡くなるまでの20年を激動の中で生きてきたのだ。
その活動の中でナポレオンは何を成し遂げたのか。
当時フランスは、ナポレオンが将校の時にフランス革命が起き、封建制から新しい時代へと進んでいた。他の国が傭兵軍をフランスに送っていた中、フランスは国民が兵士となり戦った。ナポレオンは軍を指揮して旧式の軍隊を倒し、自由な世の中を作るために役に立った。
学問では、エジプト遠征中に学者を集めてエジプトの研究をさせ、エジプト学の役に立った。また、新しい時代のために、学者を集めて「ナポレオン法典」という法律をまとめ上げた。これは近代国家の法律の元となっている。
新しい時代の役に立つことをした後、ナポレオンは自分のために権力を使ったが、人々の暮らしを圧迫しその上でロシアの大遠征という大失敗をしてしまったので、世の中の正しい進歩にとって有害な存在となってしまったのだ。
英雄とか偉人とか言われている人々の中で、本当に尊敬ができるのは、人類の進歩に役に立った人だけだ。そして、人類の進歩に貢献した事業だけが真に値打ちのあるものなのだ。
雪の日の出来事
ガッチンを上級生から守る約束をして2週間たった日のこと。校庭に雪が降ったので、ガッチン・浦川君・水谷君・コペル君は校庭で雪遊びを始めたところガッチンが雪だるまにぶつかって倒してしまう。雪だるまを作ったのが山口の兄たちだった。雪だるまを倒したことを山口が告げ口していたのだった。
上級生に見つかってしまいガッチンの危機が迫る。浦川君・水谷君はガッチンを守るために前に出たが、コペル君は雪玉を隠して進み出ることができない。3人が上級生に殴られるのを黙ってみていることしかできなかった。
その日の夜に熱を出しそのまま何日も学校を休んでしまう。約束を守れなかった後悔に動けなくなるコペル君のところに、叔父さんがやってくる。
叔父さんは、今回のことで許してほしいという資格はない。後悔で動けないなら一度考えるのをやめてしなくてはいけないことにまっすぐ進んで行けと諭し、コペル君はガッチンに手紙を書き、謝るという行動に出たのでした。
人間の悩み過ちと偉大さについて
人が苦しみや悲しみを感じているとき、本来人間がどういうものであるのかを教えてくれる。
人の体が苦痛を感じて故障を知ることができるということは、体が正常でないことを苦痛が教えてくれる。同じように、心が感じる苦しみや辛さは、人間が人間として正常な状態にいないことを教えてくれる。
人間が人を憎んだり、敵対しているのを苦痛に感じ吹こうになるのは、憎んだり敵対するのが本来正しくないから。人間が自分の才能を発揮できずに苦しむのは、自分の才能を発揮できないのは本来正しくないからだ。
人間が人間らしい苦痛を感じるときは、自分が取り返しのつかない過ちを犯してしまったという意識だ。正しい道に従ってあるいていく力があるから、こんな苦しみもある。
ガッチンたちとの仲直り
コペル君は、叔父さんのノートの中に自分を見つけます。その自分に励まされ学校に行くことを決意します。いざ3人を前に逃げ出したくなりますが、ノートの言葉に励まされ、謝ることができたのです。
人間分子コペル
コペル君は、みんなと仲直りした後ノートを見ながら「自分が世界の中心を回っていないのなら、世の中は何を中心に回っているのか」と考えました。
そして、また銀座のデパートの屋上に叔父さんと一緒に上がったとき「世の中を回している中心なんてもしかしたら本当はないのかもしれない」「あの日の屋上でなんだか世界の中に溶けて消えてしまいそうなへんな気持ちになったけど、でも今はしっかりと飛び込んで行ける気がするんだ。」
まとめ
「君たちはどう生きるか」は、「人間らしく生きるにはどうしたらいいのか」を考えさせる大人でも読み応えのある作品です。特に世の中に悩むこんな人にオススメです。
・友だちとの人間関係に悩む中高生
・人生が思い通りならず悩んでいる人
・他人と自分を比べてコンプレックスを感じている人
・取り返しのつかない失敗をしてしまった人
「君たちはどう生きるか」を読み終わった後、そっと背中を押してくれるでしょう。
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